コラム

債務整理(借金問題)
2022.09.21

債務整理

(1)債務整理とは

債務整理には、任意整理(私的整理)と法的整理(倒産手続)があります。

(2)任意整理の累計

任意整理には、公表されている準則に基づいて進められる任意整理(準則型任意整理)と準則に基づかずに適宜の方法で行われる任意聖地(純粋任意整理)があります。

(3)純粋任意整理の場合

純粋任意整理の場合、弁護士が債務者の代理人となって、債権者と返済額や返済方法を交渉します。一般的に、純粋任意整理の場合には債務の免除を受けることは難しく、全ての債務を3~5年の分割で弁済することについて協議をします。

過去に貸金業者等から借入れをしていた場合には、過払金が発生するかを確認します。過払金とは、利息制限法の上限金利(10万円未満なら年利20%、100万円未満なら年利18%、100万円以上なら年15%)を超える支払をしていた場合、上限金利を超える部分は無効となり、無効となる払いすぎた利息をいいます。過払金は、平成18年以前から貸金業者と取引をしている場合に発生する可能性があります。過払金の有無を調べるため、貸金業者等から取引履歴を取り寄せ、利息制限法に基づいて引直計算をします。引直計算の結果、過払金がある場合には、元本に充当されますので、元本の額が圧縮されます。元本がなくなっている場合には、過払金の返還を請求します。

(4)準則型任意整理の場合

準則型任意整理の準則として、平成13年9月に私的整理に関するガイドライン研究会が公表した「私的整理に関するガイドライン」(大企業や中堅企業向け)、令和4年3月に中小企業の事業再生等に関する研究会が公表した「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」があるほか、平成25年12月に経営者保証に関するガイドライン研究会が公表した「経営者保証に関するガイドライン」について、令和4年4月に「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的な考え方」が公表されました。

(5)私的整理手続の共通点

いずれの手続も、ある時点の財産と負債を確定させ、過去の経緯や現在の状況を踏まえつつ、将来に向けての関係性を整理し直すため、保有する財産の把握、その活用や処分の可能性、収入や信用、負担する債務の減免や猶予といった手立て、その後の弁済の可能性、他の手段との比較や優劣、責任負担のあり方などについて、債権者と協議を行って、債務整理案を作成して全債務者の同意を得ることにより債務を整理することになります。

 

(6)法的整理の累計

法的整理には、破産、民事再生(個人再生)、特別清算、会社更生の手続があります。

(7)破産手続

破産手続のうち、債務者が自分で申立てをすることを「自己破産」といいます。

破産すると、生活に必要な一定の財産を除いて、債務者の財産は破産管財人が換価し、破産手続に必要な費用に充て、債務者に配当されることになります。

個人の場合、配当しても弁済できなかった債務について、裁判所が「免責」の決定をすれば、弁済しなくてもよくなります。ただし、税金は免責の対象になりませんので、支払義務が残ります。

一定の資格が必要な職業の方は、破産により仕事ができなくなることがあります。

破産したという事実は、国が発行している官報に掲載されます。戸籍や住民票に載ることはありませんし、選挙権もなくなります。住所の変更も裁判所の許可を受ければ、することができます。破産したことを理由とする解雇は許されません。

財産がないことが明らかな個人の場合には、破産管財人が選任されずに破産手続が廃止となり、免責手続に移行することがあります(同時廃止)。

法人の場合や個人の場合でも財産がある場合や事業をやっていた場合には、裁判所から「破産管財人」が選任され、財産の調査、処分を行うことになります。破産管財人が選任される場合には、申立ての際に、印紙や郵便切手、官報公告費用の他、破産管財人の費用も予納することになります。

(8)民事再生(個人再生)

民事再生とは、手続開始時点の債務の弁済をいったん棚上げし、再生計画案で定める弁済額を分割で弁済する手続をいいます。民事再生は、法人でも個人でもすることができますが、債務の額が5000万円以下の個人の場合には、個人再生という簡易な手続によることができます。住宅ローンの債権は、他の債権とは別に債務の弁済を継続することで自宅を失わずに済むという条項を設けることができます。

個人再生の最低弁済額は、基準債権額100万円未満の場合はその基準債権額、基準債権額が500万円未満の場合は100万円、基準債権額が1500万円未満の場合には基準債権額の5分の1、基準債権額が3000万円未満の場合には300万円、基準債権額が5000万円以下の場合には基準債権額の10分の1となります。このほか、破産の場合の予想配当率を上回らなければならないとされています(清算価値保障原則)。弁済期間は原則3年間ですが、やむを得ない事情がある場合には、最長5年まで伸長することができます。

決まった収入のある人で、住宅ローンを抱えており住宅を手放したくない人などに有効な手続です。

(9)特別清算

特別清算とは、解散した株式会社に債務超過の疑いがある場合に会社を清算する手続で、協定案を作成し、債権者の過半数かつ債権額の総額の2/3以上を有する債権者の同意が得られれば協定案が可決され、協定にそって弁済を行い特別清算が結了すると、会社が消滅することになります。

(10)会社更生

会社更生は、株式会社(主として大企業)について、手続開始時点の債務の弁済をいったん棚上げし、裁判所が選任する更生管財人のもとで更生計画案を作成し、会社を立て直し、事業を継続する手続をいいます。

(11)どの手続を選択するにしても

弁護士に委任することを決めたら、債権者にはもう支払いをしないでください。

純粋任意整理手続以外の手続では、特定の債権者にだけ支払うということもしてはいけません。

返済することができないのですから、借入もしてはいけません。

債権者に受任通知が届くと、債権者からの請求は止まります。債権者から連絡があった場合には、弁護士に委任した旨を伝えてください。

債務の弁済が滞ると信用情報が記録され、一定期間は借入れができないとされています。

保証人がいる場合には、手続を始める前に、連帯保証に連絡しておいてください(弁護士による受任通知がなされると、債権者は保証人に請求します)。

いずれの手続をとっても、個人の税金は支払わなければなりません。

弁護士には、必ず、全ての財産と全ての債権者をご教示ください。

債務整理(借金問題)の他の記事についてはこちら

スムーススクロール