コラム

相続・遺言
2022.09.6

相続問題

相続について

相続とは、人(被相続人)が亡くなったときに、その人の財産、負債、法律関係を特定の人が引き継ぐことをいいます。

 

遺産分割協議・遺産分割調停・審判

遺言書がある場合には、原則として遺言書にそって相続します。

遺言書がない場合には、相続人が協議して遺産の分割方法を定めます。

相続人の協議が整わない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、裁判所で話し合いをして遺産の分割方法を定めます。

調停でも分割方法が定まらない場合は、裁判所の決定(審判)により、遺産の分割方法が定まります。

民法では、誰が(相続人)どのような割合で相続するか(相続分)が定められていますので、遺産分割の基準になります。

 

相続人と相続分

被相続人に配偶者がいれば、配偶者は常に相続人になります。

被相続人に子(実子、養子を問いません)がいれば子が相続人になります。被相続人が亡くなる以前に子が亡くなっている場合には、子の子が相続人となります(代襲相続)。配偶者の相続分と子の相続分は各1/2とされ、子が数人あるときは各自の相続分は等しいものとされています。例えば、配偶者と子が2人いる場合には、配偶者が1/2、子が1/4ずつとなります。

被相続人に子や孫がいない場合には、親が相続人になります。被相続人が亡くなる以前に全ての親が亡くなっている場合には、祖父母が相続人となります。配偶者の相続分は2/3、親の相続分は1/3とされています。例えば、配偶者と両親がいる場合には、配偶者が2/3、両親が1/6ずつとなります。

被相続人に子がおらず、被相続人が亡くなる以前に全ての親、祖父母が亡くなっている場合には、兄弟姉妹が相続人となります。被相続人が亡くなる以前に兄弟姉妹が亡くなっている場合には、兄弟姉妹の子が相続人となります(代襲相続)。配偶者の相続分は3/4、兄弟姉妹の相続分は1/4とされています。例えば、配偶者と兄弟が2人いる場合には、配偶者が3/4、兄弟が1/8ずつとなります。

 

遺留分

遺留分とは、被相続人の遺産のうち兄弟姉妹を除く法定相続人に対して保障される最低限の遺産取得分をいいます。被相続人の遺産をどのように分割するかは、被相続人の意思が尊重されますので、原則的に、生前の贈与や遺言があればその通りに分割されます。もっとも、相続には残された家族の生活保障や婚姻生活で築いた資産の精算という側面もありますので、被相続人の遺言や贈与等があった場合でも、遺留分権利者の権利を侵害する場合には、遺言や贈与等によって財産を受け取った人に対して、その侵害額を請求することを認めています。遺留分は、配偶者と子の場合は法定相続分の1/2、親の場合は

 

寄与分・特別受益

寄与分とは、共同相続人の中で、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合に、その寄与を金銭的に評価したもののことです。寄与分の額は、共同相続人の協議で定めますが、その協議が整わないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して定めることとされています。

寄与分は相続人でない者(被相続人の息子の妻など)には認められませんが、民法の改正により特別寄与料という制度ができました。すなわち、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族は、相続人に対して特別寄与料の支払を請求することができるようになりました。

特別受益とは、共同相続人の中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた財産をいいます。特別受益者があるときは、被相続人が亡くなった時に有していた財産に、贈与等の価額を加えたものを相続財産とみなし(特別受益の持戻し)、相続分の中から、その贈与等の価額を控除した残額が具体的な相続分となります。

 

相続放棄

相続の放棄とは、被相続人の財産、負債、法律関係について、相続の権利を放棄することをいい、相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人にならなかったものとみなされます。相続の放棄をする場合には、相続の開始(被相続人が亡くなったこと)を知った時から3か月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄の申述をしなければなりません。

その期間に限定承認又は相続放棄をしなかったり、相続財産を処分したりしたときには、単純承認したものとみなされ、被相続人の負債を引き継ぐことになってしまいますので、注意が必要です。

 

成年後見等

成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などが原因で判断能力が低下した方を保護する制度です。家庭裁判所に対して、成年後見人(後見人・保佐人・補助人)等の選任申立てをし、家庭裁判所が選任した成年後見人等が本人の利益のために、本人に代わって行動することとなります。

共同相続人の中に判断能力が低下した方が含まれていた場合、遺産分割協議において十分な判断をすることができませんので、成年後見の申立てをすることになります。

 

遺言書作成

遺言書とは、被相続人が相続に関する自分の意思を示すための書類です。一般的な種類としては、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。

自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押すことが必要です。ただし、財産目録については、民法改正により、自書することを要せずパソコンで作成したものでも認められるようになりました。また、自筆証書遺言を法務局で保管する制度も始まりました。

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言です。公正証書遺言を作成するには、証人2人の立会いが必要で、財産の額に応じて費用が掛かります。公正証書の原本は公証役場に保管されます。

秘密証書遺言は、遺言者が証書に署名押印し、その信書を封じます。封筒には本人と証人、公証人の署名押印が必要です。秘密証書遺言の作成にも公証人の費用がかかります。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所で、相続人立ち会いのもとで開封する「検認」という手続が必要です。

 

弁護士に依頼するメリット・デメリット

相続事件は、法律の規定が複雑ですので、法律の専門家である弁護士に依頼することで、思わぬ失敗を防ぐことができます。遺産分割協議書に署名押印をしてしまうと、法律上の取消原因がない限り取り消すことはできませんので、署名押印の前に弁護士に相談することが大切です。

弁護士に依頼すると、弁護士費用がかかります。相続事件は、他の相続人の対応によって、長期化する場合もありますから、料金体系が分かりやすいことが大切です。

弁護士によっては、相続事件を取り扱っていない弁護士もいますから、相続事件を取り扱っている弁護士に依頼する必要があります。相続事件に注力しており、相続問題の解決実績がある弁護士の方が心強いでしょう。

弁護士の知り合いがいる人や以前に弁護士に依頼していた人から紹介してもらう方法もあります。そうでない場合には、インターネットで情報収集したり、弁護士会の法律相談で相談を担当した弁護士に依頼したりすることになりますが、相続事件では、他の人には話しにくい親子や兄弟の話をすることになりますし、他の相続人の対応によっては感情的になる場面もありますので、親身に相談に乗ってくれる、いろんなことを話しやすい、コミュニケーションがとれる弁護士に依頼し、弁護士と信頼関係を構築することが望ましいです。また、都合のいい話ばかりでなくリスクも話してくれることも大切だと考えます。

 

弁護士費用

弁護士報酬として、事件を委任するときに着手金、事件が終了したときに報酬金がかかります。その他、実費として、戸籍の取寄費用や家庭裁判所に納める印紙や郵便切手の費用がかかります。また、不動産の評価が問題になる場合には、不動産の鑑定費用が必要になる場合があります。

事件の経済的な利益の額 着手金 報酬金
300万円以下の場合 8.8% 17.6%
300万円を超え
3,000万円以下の場合
5.5%+99,000円 11%+198,000円
3,000万円を超え
3億円以下の場合
3.3%+759,000円 6.6%+1,518,000円
3億円を超える場合 2.2%+4,059,000円 4.4%+8,118,000円

※消費税込。実費は別途。

※着手金の最低額は11万円。

※事件の難易度等を考慮して、事案によって30%の範囲内で増減する場合があります。

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