コラム

離婚・男女関係
2022.12.28

協議離婚の進め方

協議離婚で注意する点

協議離婚の場合には、夫婦が離婚について話し合った結果、お互いが離婚に合意すれば、市区町村役場へ離婚手続を提出するだけで離婚が成立します。離婚届が受理されるために必要な取り決め事項は、未成年の子がいる場合に、どちらが親権者になるかということだけです。つまり、未成年の子がいない夫婦の場合には、お互いに離婚する意思があれば、すぐにでも離婚届を提出して離婚することができます。離婚後、名字(氏)が戻る人の場合には、本籍を決めておかなければなりませんが、これは本人の問題ですから、夫婦で話し合う必要はありません。

ただし、財産分与・慰謝料などのお金の問題をはじめ、面会交流・養育費などの子の問題、離婚後の子の戸籍と名字(氏)の問題など、離婚に際して解決しておくべき問題はたくさんあります。離婚を急ぐあまり、こうした離婚に伴う問題を解決しないまま安易に手続を進めてしまうことは避けた方が賢明です。離婚前に決めるべきことを決めなかったばかりに離婚後のトラブルに発展するケースも十分に考えられるからです。

協議離婚をする場合には、離婚後に後悔や苦労をすることのないように、離婚に伴う問題について夫婦で話し合い、お互いに納得した上で離婚届を提出することが大切です。

なお、相手の暴力や不貞行為など、明らかに相手に非がある場合でも、相手が離婚に同意しない限りは協議離婚をすることはできません。

話し合いによる解決が無理な場合には、家庭裁判所に調停を申し立てる調停離婚へと進むことになります。

 

スムーズな協議の進め方

協議離婚の場合、夫婦の話し合いによって離婚に伴う問題を解決していくのが基本です。話し合いをスムーズに進めるためには、お互いの利害が対立しそうな問題を事前に整理し、その解決策についても十分に検討しておく必要があります。自分の要求を一方的に押し付けるだけでは、話し合いは平行線をたどり、いつまでも離婚できないということになりかねません。あらかじめ自分の希望を整理し、相手の出方によっては譲歩できる範囲などをよく考えた上で、話し合いに臨むようにしましょう。

また、夫婦関係に亀裂が入り、離婚について話し合うこともままならない家庭内離婚のようなケースや、条件面などで話がスムーズに進まないようなケースでは、お互いの気持ちを整理する意味でも、一時的な別居を提案してみることも考えられます。別居期間を作ることによって、お互いに離婚後の将来を冷静に考える時間ができるため、その後の話し合いがスムーズに進むことも少なくないからです。

ただし、正当な理由もなく、一方的に同居を拒否したり、別居を強制したりすることは避けなければなりません。相手の意思を無視した別居は、調停や裁判にまで発展したときに不利になるうえ、裁判離婚での離婚原因の一つになる可能性があるからです。

離婚についての話し合いは感情的になりがちですが、できるだけ冷静な態度で話し合いを進めるように努力し、問題をひとつひとつ根気よく解決していくことが大切です。離婚後のトラブルを最小限にとどめるためにも、くれぐれも一時の感情や成り行きで安易に結論を出すことのないように注意する必要があります。

 

離婚届を提出する前に注意すること

協議離婚をする場合に最も注意しなければならないのが、話し合いで決めた内容は必ず書面にしておくということです。離婚後に相手が取り決め事項を守らなかった場合、口約束だけでは何の証拠もないため、「言った」「言わない」の水掛け論となり、結局は約束を破られるというケースも十分に考えられるからです。

こうしたトラブルが発生したときに、裁判で確実な証拠となるのが、離婚に際して取り決めた内容を記載した書面です。書面には、離婚協議書、覚書、合意書などのタイトルをつけ、お金の問題、子の問題などについて、夫婦で取り決めた内容を具体的に記載することが大切です。同じ文面で2通の書面を作成したら、記載内容を確認したうえで夫婦双方が署名押印し、お互いに1通ずつ保管します。

特にお金に関する取り決め事項は、相手を信用していても、口約束で終わらせるべきではありません。書面を作成しておけば、後日、調停や審判、裁判になっても、合意が成立したことを証明する証拠になります。

もっとも、こうした書面は、相手が約束の支払を行わないときでも、差押えなどの強制執行をすることはできません。お金に関する取り決め事項を確実に守らせたい場合には、強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくと安心です。公正証書にした場合、仮に約束の支払が守られないときには、調停や審判、裁判を起こさなくても、公正証書に基づいて預貯金や給与などの相手の財産を差し押さえることができます。

 

取り決め事項を公正証書にするには

公正証書には、法律の専門家である公証人が公証人法や民法などの法律に従って作成する公文書のことです。公文書として高い証明力があるうえ、債務者が金銭債務の支払を怠ったときには、裁判所の判決などを待たずに、直ちに強制執行の手続に移ることができます。

財産分与や慰謝料、養育費など、お金に関する取り決め事項を公正証書にしておけば、相手が支払をしないときには、すぐに相手の財産を差し押さえることができます。

公正証書には、親権者や面会交流などに関して法的な強制力はありませんが、トラブル発生時の証拠としてお金の取り決め事項と一緒に記載しておくとよいでしょう。財産分与や慰謝料を分割払にしている場合でも、約束違反があれば、残額につき一括払をするとの約束(期限の利益の喪失条項)をしておけば、その残額について強制執行できます。

公正証書を作成したい場合には、夫と妻が本人の印鑑証明書と実印を持参して、公証役場に出向きます。公証役場は全国に約300か所あり、当事者の都合の良い場所を選んで手続を行うことができます。最寄りの公証役場に連絡を入れ、事前に作成したい内容などを伝えておけば、当日の手続もスムーズに進みます。また、本人が公証役場に出向けない場合には、代理人に手続を委任できます。

なお、作成費用は記載する取り決め額によって異なりますが、約5,000円(記載額役100万円)~約3万円(記載額約5,000万円)程度です。

 

離婚届の書き方や手続

お互いが離婚することに合意し、親権者をはじめ離婚に伴う問題についての取り決めもできたならば、あとは市区町村役場に離婚届を提出します。未成年の子の親権者、離婚後に名字(氏)が戻る人の本籍などを含め、必要事項を記入したうえで、夫と妻のほか、成人の証人2人が署名します。提出の際に自署かどうかをチェックされるわけではありませんが、余計なトラブルを防ぐ意味からも、必ず当事者が署名するようにしてください(2021年9月1日から押印は任意になりました)。

離婚届の提出先は、結婚中の夫婦の本籍地か、住所地の市区町村役場の戸籍係(戸籍係のある担当課の名称は市区町村によってさまざま)です。本籍地以外の役場に提出する場合は、戸籍全部事項証明書も必要となります。

なお、第三者に離婚届の提出を依頼したり、郵送によって提出したりすることもできますが、できるだけ夫婦で市区町村役場に出向き、最後まで2人で確認したほうが安心です。

 

一方的に離婚届を提出させないための防衛策(不受理申出)

離婚届を受け付ける市区町村役場では、夫婦の署名が自署かどうかや夫婦に離婚する意思があるのかなどを細かく確認するわけではありません。基本的に記入ミスなどの不備がなければ離婚届は受け付けられ、受理された時点で離婚が成立します。

そのため、夫婦2人の合意によるものではなく、一方が勝手に離婚届を提出した場合などでも離婚が成立してしまう危険があります。また、一時の感情から署名し、相手に離婚届を渡したものの、未解決の問題に決着をつけるまでは離婚を先延ばしにしたいというケースもあるでしょう。

このような場合には、離婚届が受理される前に不受理申出という手続をしておく必要があります(戸籍法27条の2第3項)。不受理申出の手続をしておけば、本人の知らない間に離婚届を提出された場合でも受理されることなく返却されます。

市区町村役場の戸籍係で不受理申出の用紙をもらい、必要事項を記入したうえで本人が署名する必要があります。郵送でも受け付けてもらえますが、印鑑を持参すればその場で簡単に手続をすることができます。

不受理申出の有効期間(不受理期間)は、6か月であるため、それ以降も離婚届を受理されたくないという場合には、改めて手続を行わなくてはなりません。なお、6か月間の有効期間中に離婚の合意ができた場合には、市区町村役場の戸籍係に取下書を提出することによって、通常通りに離婚届が受理されるようになります。

 

勝手に提出された離婚届を無効にするには

不受理申出をする前に離婚届が受理されていた場合などでも、夫婦の一方に離婚する意思がなかった場合には、その離婚は無効となります。ただし、離婚の成立が戸籍に記載されてしまった場合には、いくら離婚の無効を主張しても、簡単に離婚の記載を抹消できるものではありません。離婚の記載を抹消するためには、裁判手続をとって、その協議離婚が無効であることを法的に明らかにする必要があります。

相手の住所地又は夫婦が合意で定める家庭裁判所に離婚無効の調停を申し立てなければなりません。調停の結果、提出した離婚届が無効であることを相手が認めた場合には、合意に相当する審判によって離婚は無効となります。

離婚無効の調停で相手が無効であることを認めなかった場合には、調停不成立となります。また、審判に対して異議の申立てがあった場合にもその審判は無効になります。

こうした場合には、相手の住所地の家庭裁判所に離婚無効の訴えを提起して、判決で離婚の無効を認めてもらわなければなりません。裁判で離婚の無効が認められなければ、戸籍上の離婚の記載は抹消できません。

なお、合意に相当する審判や判決によって離婚の無効が確定した場合には、審判・判決の謄本を市区町村役場の戸籍係に提出することにより、戸籍から離婚の記載を抹消することができます。

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