協議離婚のメリット・デメリット
当事者間では離婚の条件について合意しているけれど、このような内容でいいのかが分からない。夫婦の関係がこじれてしまって直接は話ができないけれど、代理人を通して話をすれば合意できそう。調停や裁判をせずに離婚したい。そういうケースでは、協議離婚が成立する可能性があるといえます。
厚生労働省の統計(令和4年度 人口動態統計特殊報告)によりますと、令和2年度は、離婚をする方の88.3%が、協議離婚、つまり離婚届を市区町村役所に提出する方法(裁判所の手続を利用しない離婚)により離婚しています。ちなみに、調停離婚は8.3%、審判離婚が1.2%、和解離婚が1.3%、判決離婚が0.9%となっています。
協議離婚をするメリットは、次の点にあるといえます。
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目次
短期間で離婚できる
調停や裁判といった裁判所での手続は時間がかかりますが、協議離婚の場合は、離婚届を市区町村役場に提出すれば離婚が成立しますので、話し合いがスムーズに進めば、短期間で離婚することができます。
離婚を早期に成立させることにより、新しい生活に前向きに取り組むことができます。
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精神的負担が少ない
調停手続では、原則としてご本人が裁判所に出向いて、過去の事実関係や財産状況等について詳細に振り返る必要があり、精神的にも負担がかかりますが、協議離婚の場合は、お互いに納得すれば離婚できますので、精神的な負担は比較的少ないといえます。
過去の事実関係や財産状況等について、お互いに言い分を主張すると、紛争が激化して関係が悪化することも多いですので、それを避けるメリットがあります。
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柔軟な解決を図ることができる
調停や裁判といった裁判所での手続では、合意が成立しなかった場合には、最終的には裁判官が判断することになりますが、合意を形成する場面でも、裁判官の判断が基準になることがあります。これに対して、協議離婚の場合には、お互いが納得すれば合意が成立しますので、調停や裁判によるよりも柔軟な解決を図ることができます。
もっとも、協議離婚の場合、次のデメリットがあります。
離婚をする際、親権者、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割など多くの事項を取り決める必要があります。これらの事項のうち、親権者は離婚届に記載しなければなりませんので、離婚をするときに決めなければなりませんが、親権者以外の事項は離婚後に協議することもできます。
しかし、離婚後は、相手方と連絡が取れなくなってしまうなど、協議が困難になることがありますので、離婚をするまでに全ての事柄について取り決めておくことが理想的といえます。
離婚後に養育費を請求して、相手方が応じない場合には調停を申し立てることになりますが、裁判所で認められるのは、原則として申立てをした月からとなりますので、申立ての前までの分が認められないことになります。また、相手方が離婚を望んでいる場合には、いったん離婚が成立してしまうと、慰謝料等を支払う動機がなくなることもあります。
そのため、すべての事項が合意に至っていない場合には、協議離婚すべきではありません。
協議離婚をする場合は、養育費や財産分与、慰謝料などについて、当事者間の離婚合意書だけではなく、公証役場において公正証書を作成することを強くお勧めします。公正証書を作成していれば、金銭の支払条項については、裁判所の判決書や調停調書を同一の効力が認められ、裁判をせずに強制執行をすることが可能になるからです。
なお、公正証書を作成した場合には、相手方に送達することを忘れないようにしましょう。送達されていないと強制執行することができません。強制執行の準備のために公正証書をすると、強制執行の準備をしていることが相手方に伝わってしまって、強制執行が功を奏しないことがあります。
相手方が預金口座を有する金融機関や相手方の勤務先が分かっているケースでは、公正証書をもとに強制執行をして預金や給料を差し押さえた例があります。
協議段階から離婚手続を弁護士に依頼するメリット
① 精神的負担が軽くなります
当事者間で協議をする場合には精神的負担が大きくかかりますが、弁護士に依頼をすると、交渉窓口が弁護士に限定され、弁護士が代理人となって(依頼者の代わりに)交渉をしますので、精神的負担が軽くなります。
② 弁護士が法的に的確に判断し、より有利な条件を引き出す
弁護士は法律の専門家であり、多くの交渉を経験していますので、法律的に考え得るの有利な条件を提示することができます。相手方がその条件に応じれば、有利な解決に導くことが可能となります。
③調停や裁判になった場合でもスムーズ
弁護士は、委任を受ける際に事情をお聞きして相手方と交渉しますし、相手方の主張も聞くことになりますので、依頼者のご希望や争点を把握することができます。そのため、仮に協議がまとまらず、調停や裁判になった場合でもスムーズに申してることができます。
また、交渉段階で不用意な発言をしてしまうと、そのことが調停や裁判で不利な事実として扱われることがあります。これに対して、弁護士に依頼すると、調停や裁判になった場合のことも見越して交渉を行うことができます。
協議離婚 | 調停離婚 | 裁判離婚 | |
方法 | 離婚届を市区町村役場に提出する。公正証書を作成することが望ましい。 | 裁判所に調停を申し立て、調停期日で合意を成立させる。 | 裁判所に訴えを提起し、証拠で立証して判決を得る。 |
期間 | 合意ができれば、早期に成立する。 | 半年から1年以上かかる。 | 調停期間に加えて、1年以上かかる。 |
話し合い | 直接話し合う(代理人による場合もある)。 | 調停委員を介して協議する。 | 双方の主張を展開する(和解の協議はありうる)。 |
裁判所出頭の要否 | ない。 | 原則として出頭必要(成立時には必須)。 | 尋問時や和解時には出頭が必要。 |
強制執行の可否 | 公正証書を作成すれば可能 | 調停調書に基づく執行可能 | 判決書(・和解調書)に基づく執行可能 |